和田芳穂さん ~棚田に咲く1万本のアジサイ~

2017.06.21

土佐町の溜井(ぬるい)地区。美しい棚田の景色が遠くまで広がる。まさに日本の里山と呼べる場所。6月、田植えを終えたばかりの田んぼは、緑の絨毯を敷きつめたかのよう。吹き抜ける風に緑の若苗がそよぐ姿は、見る者の心を涼やかにしてくれる。

 

未来の里で和田芳穂さんと出会う

溜井地区の長和には、未来の里(とわのさと)と名づけられた場所がある。看板にはこう書いてある。
「この未来の里は、平成5年から和田芳穂氏が、サツキ2,000㎡、アジサイ1万本、花菖蒲100㎡その他ピラカンサス、しだれ藤などの植栽に取り組み、四季折々に地域の人々の目を楽しませています。」

アジサイを見ていたら、なんと看板に名前のある和田芳穂さんがたまたま帰宅したところに出くわして、話を伺えることになった。「まぁ、こっちの涼しいところにきいや。」と田んぼの畦をひょいひょい歩いていく。

その先にあるのは、田んぼのすぐそばに立つ東屋。アジサイを見に来た人が、お弁当を食べたり、休憩したり、くつろげる場所として開放している。なんて懐の深さなんだろう。

東屋からは溜井地区の対岸にある伊勢川地区の棚田が一望できる。眺めは抜群。ここで食べるご飯はうまかろう。ここで飲むお茶は美味しかろう。

この方が和田芳穂さん。とても気さくな方で急なお願いにも関わらず、いろんな話を聞かせくれた。芳穂さんは米農家さん。約2町の田んぼで米を作っている。生まれも育ちも溜井の方だ。

 

25年植え続けた紫陽花の数は1万本

平成5年からアジサイを植え始め、毎年補植を重ねて、約25年にわたり1万本のアジサイを植え続けている。それもひとりでだ。今では、6月中旬から7月上旬まで、10種類以上のアジサイが来る人の目を楽しませてくれている。

「この間は市内から20名くらいがツアーで来たし、千里からも毎年20名くらい来てくれゆう。今まで1番遠くからは北海道の北見から夫婦で来られた方もおったな。インターネットで知ったとか言うて。」
「こないだはテレビ高知が来ちょった。だいぶ前やけんど、みのもんたの番組でも紹介されたことがあるで。」

「見に来た人の楽しみ方はそれぞれよ。写真撮ったり、絵手紙を描いたり、半日くらいおる人もおる。俳句の題材にする人もおったなぁ。」
なにかを押しつけられるわけでもなく、そこにあるものを自らの感性でとらえ、受けとめ、感じたままを楽しめばいい。芳穂さんの話を聞きながら、そんなことを思った。

種類の異なるアジサイは時期をずらして咲くため、比較的長い間、花を楽しむことができる。「まだ7部咲きくらいやろうか。あと1週間くらいしたら満開になる頃かな。花が終わったら剪定して、草刈りは年に最低でも2回はする。」

 

アジサイを植えようと思ったきっかけとは

「アジサイが観光になるろうか、と思いよったけんど、見に来てくれた人が末広でお弁当買ったり、道の駅でお土産買ったりして、ちったぁ地域にお金が落ちゆうんかなぁと最近思うようになった。やき、少しは土佐町に貢献できゆうんかもしれんねぇ。」

ところで、アジサイを植えようと思ったきっかけはなんだったんですか?
「孫がねぇ、ここを好きになってくれたらええなぁと思ってね。」

孫のために1万本のアジサイを植える。芳穂さんなりの大切な人への想いの伝え方。そんな想いのこもったアジサイだからこそ、毎年多くの人がここを訪れる。人は想いに惹かれる。溜井地区の長和に咲く1万本のアジサイ。色とりどりのやさしい色には、芳穂さんの心が表れている。

『未来の里(とわのさと) 1万本のアジサイ』
【時期】 6月上旬〜7月上旬
【場所】 土佐町溜井
【問合せ】 080-6288-6534/info@reihokukikou.kochi.jp

この記事を書いた人

Maeda Kazutaka
Maeda Kazutaka
れいほく紀行編集長。高知県出身。2015年4月より土佐町石原地区での暮らしを始める。地域の宝もんを発掘しながら、里山暮らしに必要な心技体の修行を積みつつ、「つながる・つなげる」をテーマに、世界中からの旅人を受け入れるゲストハウス『omoya』オープンに向けて奮闘中。細胞にしみわたる音楽と、精神を解放するお酒をこよなく愛する。



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